歳を取ると1年があっという間に経ってしまうのは「身体の代謝が低下するため体感時間がゆっくりと進み、現実の時間においていかれてしまうから」

齢を取ると私達は動作がゆっくりとなり、いつの間にか時が過ぎていて、「世界が刻む時計のスピードについていけていない」ということが起きている

今年ももうすぐ終わる。この間新年だったのに。という会話が周囲から聞こえてくるようになった。
私の周りにはそう感じるお年頃の方が多いこともあるけれど、歳を取るとなんでこんなにあっという間に1年経ってしまうのだろう。

かつて黒柳徹子さんが「徹子の部屋」の番組の中で
「50代では一年間が1ヶ月、60代では1週間、70代では3日間ぐらいのスピードで過ぎていくのよ」
というようなことを言っていた。今や自分の身に起きている。

一川誠さんによる「大人の時間はなぜ短いのか」(集英社新書,2008)によれば、
”年を重ねるにつれ、同じ時間の長さをより短く感じるようになることは、実験的研究でも見出されている傾向”(p14)
ということだから「へぇ~」である。

一川氏によると、
”時計は一定の速度で進むものとして作られている。それに対して心的時計(感じられる時間)は様々な要因によって進み方を変える”そうだ。(p119)
確かに、友人からかかってきた電話でワイワイゲラゲラやっていて、15分位話していたと思ったら1時間近く過ぎていて驚いた、てなことはよくある。(実は昨日)

また、
”年齢に関しては、年をとるほど時間が経つのが速く感じられるという傾向が知られている。
様々な要因が寄与しているが、そのうちの一つが、加齢による身体的代謝の低下であり、身体的代謝が落ちると、それに伴って心的時計の進み方も遅くなる。
そのため時間の刻む1分、1時間、1日、1年は、心的時計よりも速く進む。
実感として、1分、1時間、1日、1年経つのはまだ先と感じられるため、時間が速く進んだように感じられるのだ”。(p120)

つまり、私達は年を取るにつれて代謝や身体運動能力が落ち、何かをすることに時間がかかったり、ノロノロしちゃうようになる。
例えば計算に時間がかかったり、スーパーでお年寄りが財布からお金を出すのに時間がかかったりすることとか。
こっちはやっとこさ終わったのに、随分時間が経っていた。なんてことが起きる。
自分ではいつも通りやっているつもりでも、若い時よりは時間がかかっている。でも私たちは普段通りにやっていると「感じて」いるため、実際の時間との齟齬が生じるわけだ。

私は朝起きてから家事や朝食、身支度を済ませて出勤するまで、10年前より1時間早く起きないと間に合わないようになっている。
試しに朝パジャマを脱いで洋服を着るまでの時間を測ったら2分もかかっていてビックリした。
寒くなったから厚着になってきているとはいえ、1分位で済んでいると思っていたのに。

こういうことか。

ということは、56歳の私が「時間があっという間に過ぎる(ように感じる)けど、一日を長く使いたい」と思ったら早起きするしかない。
自分が思う以上に動作がゆっくりとしていたことを実証してしまったからね。
お年寄りは自然と早起きするようになるが、足りない時間を補うために早起きするようになるのかもしれないな。

他にも、単調な毎日を過ごしていると時があっという間に過ぎるように感じる、楽しいイベントが来るまでは1日1日が長く感じるけど、楽しんでいる時間はあっという間に過ぎる、と私達は時間について様々な感じ方をする。

時間の経過を感じることは、年齢や、代謝、環境、感情により縦横無尽に変化しているそうだ。
それなのに世界で決められた「時間」というものに強制される生活ってなんなんだろう。まあしょうがない。それならそれで、時の流れを後悔なくたっぷりと味わいましょう。

出典: 一川 誠著.大人の時間はなぜ短いのか.集英社新書,2008,