・スリランカで被害にあっていたのでよく知っている。とにかく痒い。
朝のラジオで最近「トコジラミ」が日本国内で流行している。と言っていた。スーツケースや荷物に紛れて海外から持ち込まれるようになり、ホテルや旅館に住み着き、宿泊者が気がつかず家庭に持ち帰る、ということだ。
戦後、日本国内では姿を見ることはなくなり、お目にかかる事がなかったこの虫の被害にあったのは、30年前、スリランカに留学していた時だ。スリランカでは当たり前。
現地の学校へ登校し始めたある日、帰宅して「なんか痒いなあ」と太ももの裏側を見ると、芯のある固くて大きくて赤い湿疹がいくつもあった。とにかく猛烈に痒い。腕もひじから手にかけて同じ状態だ。
ビックリしてホストマザーに見せると「ああ、bugsね」と事も無げに言われて、渡されたのは薬ではなく「1日分の新聞紙の束」。
これを明日から座るときはお尻に敷いて、という事だった。
・対策は「新聞をお尻に敷くこと」
幸いホームステイしていた家にはいなかったが、とにかく学校がひどい。
まず椅子。藤(ラタン)で編んだ座面の藤が交差している所に隠れている。表面的には全く見えない。座ったとたん出てきて吸う。そして吸ったらまた隠れてしまうから姿を見ることはない。学校中の椅子がその状態だった。
新聞紙をお尻に敷いて座れば私の皮膚に到達できないから、ということで「1日分の新聞紙」となったわけだ。
次に腕。トコジラミは教室の机の板と板の間にも潜んでいて、私が机に腕を置くと隙間から出て来て机に当たっている部分を吸う。吸われている時は気が付かない。
しばらくしてかゆみと共に発疹に気がつき、あーやられたとなる。ノートをとる時もノートや教科書や、やっぱり新聞紙の上に腕を置かないと吸われてしまう。
現地の人は耐性があるのか殆ど吸われない。吸われてもそれほど痒くないらしい。とにかく私だけ。日本人の血は吸ったことがなくて「新鮮だった」わけだ。
「ああ、それはBugsよ」って言われて調べた英和辞典には「昆虫」とか「虫」としか書いていない。知ってるよ。虫だってことは。なんの虫かって話だよ!と泣きそうになったものだ。
インターネットはもちろんない時代だから検索できないし、画像もない。危険なのかどうなのかもわからない。ただ「Bugs」だけだ。
確かに新聞紙を敷いたら吸われなくなった。でもちょっとでも新聞紙がずれて隙間ができたらすかさずやられたものだ。
しかし慣れとは恐ろしいもので、半年が過ぎた頃からは、腕をわざと机に置いて誘い出し(じっと見ていると出てくる。授業中だけど)、出てきたところを吸われる前に潰す、というサディスティックな行為をするようになっていた。今考えるとなんてことをしてたのか。
トコジラミの他にも蚊にもたくさん刺されていたので、帰国する頃には露出している手足は全て黒い斑点(跡)だらけになった。若かったから半年できれいに跡は消えたが、あれが日本で流行しているのか。ということを考えると気持ちの良いものではない。
・昼間だって吸血されます。
今日本国内で報道されているのは「夜間に出現し、寝ている間に吸血されます」というものが多いが、昼間だって座れる。私は昼間に被害にあっていた。
「寝ている間」という前提は、ベッドや布団、寝室に潜んでいてそこで夜寝るから吸血されるわけなので、例えばリビングの家具や畳の隙間にトコジラミが潜んでいれば、昼間だって吸血される。
せめて国内であっても旅行先から持ち帰らないようにしないと。(どうやって?)
あっという間に増えるし、殺虫剤に対する耐性がついたトコジラミが蔓延しているらしいから、家で繁殖したら、駆除は相当大変らしいよお。